カントリーインテリア(イングリッシュカントリー・フレンチカントリー・アーリーアメリカン・シェーカー・サンタフェ)

カントリースタイルとは、素朴で長閑な田舎風のインテリアスタイルです。ここでのカントリーとは、国という意味ではなく、「田舎」という意味になります。無垢材を利用するなど、素材を活かす温かみのあるナチュラルさが特徴。地域やテイストによってアメリカンカントリーやフレンチカントリー、イングリッシュカントリーなどに細分化することができます。

カントリーとは対照的な位置にあるスタイルとして、アーバンスタイルが挙げられます。クールでスタイリッシュ。洗練された都会的なインテリアスタイルです。

カントリースタイルの種類

カントリーには、大きくわけて、英国の貴族の為に作られたカントリーハウスの流れを汲むイングリッシュカントリー、フランスのプロヴァンス地方のフレンチカントリーなどのヨーロッパ系カントリーと、アーリーアメリカンシェーカーサンタフェなど幅広いスタイルのアメリカンカントリーがあります。

これらに共通しているのは、自然に囲まれた長閑な田舎のようなインテリアスタイルだと言うことです。

アメリカンカントリースタイル

アメリカンカントリースタイルは、開拓時代のログハウスを思わせるインテリアスタイルです。

他に、人気のアメリカンスタイルとしては、青い海と太陽の光に浜辺のリラックスした雰囲気を取り入れた西海岸スタイル、NY州5区の一つでラグジュアリーなマンハッタン地区とは対照的に倉庫や古いアパートが立ち並ぶブルックリン地区を思わせるブルックリンスタイルなどもあります。

広大な土地を抱え、様々な歴史や文化が入り混じるアメリカ。上記のように豊富なバリエーションがあるアメリカンスタイルですが、その中の一つ、アメリカンカントリーについて紐解いていきたいと思います。

一口にアメリカンカントリーと言っても、アーリーアメリカン、シェーカー、サンタフェなどのスタイルに分けることができます。そして、単にアメリカンカントリーと言えば、「アーリーアメリカン」のことを指します。

「アメリカンカントリー = アーリーアメリカン」

アーリーアメリカンスタイルの特徴

アーリーアメリカン(Early American)とは、16世紀後半から始まるアメリカの英国植民地時代風の、西部開拓時代様式を意味し、建物・家具・工芸品などのことを言います。

当時、アメリカには様々な国から開拓者達が訪れ、限りある木材を合理的に使い、アメリカの風土に合わせて独自にアレンジしながら住居が建てられました。そんな開拓時代のアメリカを思わせるログハウスのような空間に、無垢のパイン材やオーク材など、木の質感を生かした自然塗装を施し、木目が見えるような家具を取り入れると、温かみのあるラフで素朴な印象になります。

アメリカ開拓時代、布はとても貴重なものでした。端布を有効活用したパッチワークは、アメリカンカントリーの象徴とも言えるアイテムです。ベースがシンプルなアメリカンカントリーのインテリアには、アクセントとしてパッチワークキルト風のラグを活用すると良いでしょう。人の手のぬくもりを感じさせる手作り感も、素朴で穏やかな雰囲気をより演出します。その他、ロッキングチェアやブリキサイン、ホーロー缶も定番アイテムです。

特徴
  • 乱張りの床
  • 低い天井、露出した梁
  • スタッコ壁
  • ルーバー(鎧戸、ガラリ戸)
  • 家具の材料はパイン材、チェリー材、メープル材
  • 家具はラダーバックチェア、ロッキングチェア、ウィンザーチェア、バタフライテーブルなど
  • ファブリックはパッチワーク、手編みのレース、手織りの格子柄、モスリンなど
  • アクセントにブリキサイン、ホーロー缶など

パイン材の重厚感のある家具をはじめ、手作りのパッチワークキルトや藤で編んだ籠などの素朴で実用的なアイテムを利用すると、アメリカンカントリーらしい毎日の生活を大切にした温かさを演出することができます。シェーカースタイルに似ていますが、不必要な装飾がある所がポイントです。

シェーカースタイルの特徴

シェーカースタイルは、俗世を離れたシェーカー教徒が田園で農園や牧畜を中心にした自給自足の生活を送る営みの中で生まれたスタイルです。

キリスト教プロテスタンティズムの一宗派で、18世紀後半にイギリスからアメリカのニューヨークにたった9人で渡り、アメリカでの創始者アン・リー(マザー・アン)をリーダーとして布教活動を行いました。最盛期には6000人以上もの宗徒がいたそうですが、今ではメイン州に数名の信徒が残るのみとなり廃れています。

彼らは、家具や日用品も手作りしており、独自に生み出した道具も多く、特に人気だったシェーカーチェアは外部への販売も行って、教団の収入源にしていました。また、制作した工芸作品、家具などは、アメリカ美術史上に大きな影響を与えました。

コミュニティで暮らし、規律を大切にして農作業をしながらの自給自足、質素で規則正しい共同生活。マザー・アンの教えで、物の配置は整然としていたそうです。そうした中で取り入れられたのが、壁と収納棚が一体になったビルトイン収納です。

シェーカースタイルにしようと思わなくても、シンプルな暮らしをしていると、自然と似たような形になると思います。そんなシンプルを追求したシェーカースタイルにも、特徴となるものがあります。

  • 扉のデザインはシンプルな框組
  • シェーカーチェア
  • ビルトイン収納
  • ベグレールとペグ
シェーカーチェア

シンプルで丈夫で、なおかつ軽いというのがシェーカーチェアの特徴です。そのため座面は木ではなく、い草やウールテープで編まれていてとても軽量です。椅子は少し後ろに傾斜していて、くつろぎやすくなっています。そして、チェアの背のデザインも重要。シェーカーの椅子と言えば「ラダーバック」です。ラダーバックとは、はしご状の背もたれのことで、当時のアメリカで広く作られていたデザインです。また、椅子の背のてっぺんにあるろうそくの炎のような飾り部分「フィニアル」も特徴の一つです。シンプルなシェーカーチェアの唯一の装飾と言えます。

椅子の後ろ脚の下端には、椅子を後ろに傾けた時に、床を傷つけないために、「ティルター」と呼ばれる玉が付いています。

壁に取り付けられたペグレールとペグ。ペグとは壁に取り付けられたフックのことで、ここに日用品のほか、椅子まで引っ掛けて空間を広く有効活用していました。

シェーカー・デザインは、次の様な言葉を背景に生まれました。

  • 美は有用性に宿る
  • 規則正しいことは美しい
  • 調和には大きな美がある
  • 言葉と仕事は簡素であること

シェーカー家具はこのような彼らの考え方を背景に生み出されたものです。そのデザインは全てにおいて簡素であり、装飾を排除した中から生まれたシンプルな機能美が、洗練されたフォルムを描き出しています。その家具には現代に共通するシンプルさと機能性があるため、シンプルなインテリアのエレメントとして使われることが多い。

サンタフェ

サンタフェ(Santa-Fé)は、スペイン語で「聖なる信仰」という意味。アメリカのニューメキシコ州都サンタフェの風土で生まれた“サウスウエスタンスタイル”です。

サンタフェと言えば、ピンク色の日干しレンガ造りのアドビ建築が美しい街。スペイン植民地時代の文化とネイティブインディアン文化が融合した独特の文化を持つ、エキゾチックで明るく開放的なイメージが特徴です。

  • 建物は日干し煉瓦作りのアドビーハウス
  • スペイン風の厚いパイン材で作られた家具やドア
  • ロートアイアン(錬鉄を使った家具)
  • 褐色やサーモンピンクの左官壁
  • 床は石張り、テラコッタ
  • ファブリックはインディゴや草木染めのコットン素材
  • ターコイズブルーの小物
  • ナバホインディアンのラグを壁にかけたり床に敷く

以上のものを組み合わせ、くつろいだ雰囲気が特徴のカジュアルベースに、スペイン、メキシコ、インディアン文化をミックスしたカントリースタイル。また、観葉植物を置くだけで、殺風景な部屋も明るく癒される空間になります。

テラコッタ(terra cotta)とは、イタリア語の「焼いた(cotta)土(terra)」が語源で、一般的には素焼きのタイルを指す。メソポタミア・エジプトなどの遺跡から発掘されるなど、古い歴史がある。古代ギリシャのタナグラ人形は特に有名。現在でも装飾として用いられる。

上質の赤土の粘土を素焼きにした器や塑像、瓦など様々なものがある。室内に装飾性を加える自然素材の風合いがログハウスによく似合うため、テラコッタ・タイルで仕上げた床が採用されることが多い。素焼きは通気性、吸水性、排水性に優れ、植物栽培のコンテナにも適する素材です。

ブリティッシュ(イングリッシュ)カントリー

ブリティッシュカントリーとは、イギリス郊外の田舎にある家をモチーフにした素朴でシンプルなインテリアスタイルです。石造りの家や素朴でシンプルな木の家具が特徴です。

アメリカンカントリーはカジュアル、フレンチカントリーは女性的で可愛い、ブリティッシュカントリーはほどよい上品さがあり、エレガントに落ち着いた雰囲気があります。暗めの色が多いブリティッシュカントリーは、ホワイトを基調とするフレンチカントリーと比べると重く、クールでシックなイメージです。

ブリティッシュカントリーのインテリアには、主にオーク材(楢の木)やパイン材(松の木)などが使用されます。テーブルなどには、それらよりも硬い材質のチェストナット材(栗の木)が好まれることもあります。デザインはシンプルで実用的。シェルフや椅子などは直線的で、ずっしりとしたデザインのものを選び、家具の足が短い、または付いていないものを選ぶと雰囲気が出ます。表面に塗装を施さない場合も多く、年月に従って深まる重厚な天然の色合いも魅力の一つとなります。チェストやクローゼットの把手部分には鉄材が、装飾部分には銅材がよく使用されます。

イングリッシュ・ガーデンを思い起こさせる花柄や、スコットランドに由来するタータンチェックや紋章などの伝統柄。取り入れる柄で、甘い印象にも、大人な印象にも傾けられます。ファブリックに取り入れたり、食器のデザインに取り入れたりするのもおすすめです。

室内を柔らかい光で満たすことができる間接照明や、レトロな印象を与えるランプシェードなどの照明を上手く利用することで、ブリティッシュカントリーらしさをより強く演出することができます。

  • ランプシェード
    ランプシェードとは、電球の周りを覆う笠のことです。明るすぎない温かみのある光を演出することができます。サイドテーブルに置く照明や、ソファの横のスタンドランプにランプシェードタイプを用いると雰囲気が出ます。

  • ブラケット
    ブラケットとは、壁に取り付ける間接照明のことで、一般的には玄関やリビングなどの壁面に取り付けられます。花の形を模したブラケットや、ロウソクと燭台の形を模したものなど様々なデザインのものがあります。

  • オイルランプ
    19世紀初頭から中期にかけてイギリスで人気があったオイルランプは、ブリティッシュカントリーのインテリアコーディネートにぴったりなアイテムです。見た目もアンティークかつレトロな印象です。インテリアとしてのオイルランプには、単に照明器具としてではなく、炎のゆらめきやまたたき、陰影を楽しむためのパラフィン系のオイルを燃料とするランプもあります。最近は電気で明かりが灯るオイルランプ風の照明もあるので、安全に利用することもできます。

    因みにオイルランプの燃料には、照明器具に用いるホワイトガソリンや白灯油、熱を加える加熱道具に用いるアルコール、テーブルの灯りやキャンプなどで用いるパラフィン系オイルがあります。

ブリティッシュカントリーとは、イギリスの田園地方のことを指します。なだらかな丘陵の中に農家が点在し、低木の森と草原の広がる長閑な情景の田園地帯です。建築、インテリアの分野ではその居住スタイルを指します。

調べていると、しばしば「重厚感・荘厳・格式高い・高級感」という言葉を目にすることがありました。しかし、それは16世紀半ば~19世紀半ばにかけて建てられた貴族階級の屋敷「カントリーハウス」に共通されるキーワードです。ブリティッシュカントリーは、あくまでもカントリーハウスの流れを汲む様式を一般家庭に落とし込んだスタイルであって、カントリーハウスに見られるフォーマルな伝統様式に忠実な英国トラディショナルスタイルとは違います。混同しないように注意が必要です。

フレンチカントリー

フレンチカントリーとは、フランス南部の田園風景が広がるプロヴァンス地方を発祥とするインテリアスタイルです。発祥地の地名より「プロヴァンス風」と呼ばれることもあります。

メインカラーはホワイトまたは薄いピンク、イエロー、ブルーなどの淡い色彩。家屋の外観は素朴な石組み、または白や淡い色調の漆喰で仕上げた壁、内部の壁と天井も白の漆喰塗りで、木の梁を露出させたり、部屋の入り口上部をアーチ状に仕上げることもあります。床は無垢材やタイルの床張り、あるいは素焼きレンガ。インテリアにはパイン材が多く使用されます。アンティーク調の黒いアイアンの取っ手を用いたディスプレイキャビネット。そして、猫脚に代表されるようななめらかな曲線を多用したシャビーシックの家具。やわらかなカーブを描くロマンティックな家具が一つあるだけで、フレンチの雰囲気を出すことができます。

シャビーシックとは、使い古されて粗末な感じと、あか抜けている上品さを持ち合わせた、アンティーク調のインテリアのことを言います。

黒いアイアンの取っ手は元々古い家具についていたのを外し、そのアイアンの取っ手だけが売られている事もあります。ドアノブを交換したり、家具のDIYを考えている人にもオススメの演出アイテムです。

まとめ

このようにカントリーには、地域によって様々な様式がありますが、どのテイストも暖かさや心地良さを感じるデザインです。 日本で言うなら、三和土で仕上げた土間やかまど、畳に縁側といった昔懐かしい佇まいに通じるものがあります。

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