【家庭菜園】肥料の種類と17種類の栄養素

野菜に肥料を与えることを「施肥(せひ)」、植え付け前に与える肥料を「元肥(もとごえ)」、栽培途中で肥料を与えることを「追肥(ついひ)」と言います。

有機物を微生物によって完全に分解した肥料のことを堆肥(たいひ)と言い、「有機系肥料(堆肥)」と「無機系肥料(化成肥料)」の2種類があります。それぞれを上手く組み合わせて使うことがより効果的です。

植物の必須栄養素

植物が生きていくために、欠かせない17種類の栄養素を「必須元素」と言います。

自然要素

大気や土壌中から自然に供給されるため、施す必要のない要素

  • 炭素(C)酸素(O)水素(H)

多量一次要素

肥料の栄養素の中で最も重視される三大栄養素。野菜の生育に欠かせない成分になります。多くの野菜はこれらの成分をよく吸収するため土壌中で不足しやすくなります。

  • 窒素(N)リン酸(P)カリウム(K)

多量二次要素

肥料の三要素の次に重要な要素。また、上記の窒素リン酸カリウムに、カルシウムマグネシウムを加えた成分を肥料の5要素と言います。硫黄が五要素に含まれていないのは、通常土壌に含まれている量で十分であり、あえて肥料として施用する必要が少ないからです。

  • カルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)イオウ(S)

微量要素

土づくりができていれば、特に肥料として施す必要のない要素。微量で足りるが不可欠な成分。

  • 鉄(Fe)銅(Cu)マンガン(Mn)亜鉛(Zn)ホウ素(B)モリブデン(Mo)塩素(CI)ニッケル(Ni)

有用元素

窒素 (N)、リン (P)、カリウム (K)、カルシウム (Ca)、酸素 (O)、水素 (H)、炭素 (C)、マグネシウム (Mg)、硫黄 (S)、鉄 (Fe)、マンガン (Mn)、ホウ素 (B)、亜鉛 (Zn)、ニッケル (Ni)、モリブデン (Mo)、銅 (Cu)、塩素 (Cl)

以上の17種類の元素である「必須元素」とは別に、必要ではないが、植物の成長を助ける元素(有用元素)があります。

  • ナトリウム (Na)、ケイ素 (Si)、セレン (Se)、コバルト (Co)、アルミニウム (Al) 、バナジウム (V)

五大栄養素の特徴

窒素

主な働きは葉、茎、根の成長。窒素は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、茎葉の生育を促し、柔らかい多汁質の葉ができます。

リン酸

リン酸は、遺伝情報の伝達やタンパク質の合成などを担う核酸(DNA、RNA)の構成成分として重要です。開花、結実を促すため、リン酸は「花肥(はなごえ)」または「実肥(みごえ)」とも呼ばれ、根の発育を促し、果菜類では花つき、実つきをよくします。

カリウム(カリ)

カリ(加里)と略されることもある。根の発育と細胞内の浸透圧調整に関係するため「根肥(ねごえ)」と言われます。日照不足気味のときにカリウムを多く施すと、光合成をする機能を回復させる働きがあります。サツマイモやジャガイモの太りをよくしたり、マメ類の実つきをよくします。水溶性のため流亡しやすいので、追肥で小出しに与えるのがよい。

カルシウム(石灰)

ペクチンという多糖類と結合し、細胞膜を丈夫にして病害虫に対する抵抗力をつける働きがあります。また根の生育を促進する働きもあります。農業・園芸分野では石灰(せっかい)とも言い、土壌酸度のpH調整にも役立ちます。牡蠣殻などが肥料の原料として使用されます。

マグネシウム(苦土)

マグネシウムは、光合成をする緑葉体を構成している元素です。植物は葉緑素の構成の中心にマグネシウムがあるために緑色をしています。欠乏または不足してくると葉緑素が減少して黄色くなり、光合成が衰えて糖類やデンプンが少なくなります。

園芸用土

園芸で利用される土を「用土」と言いますが、正式には「園芸用土」と総じて呼ばれます。「培養土」とは、あらかじめ数種類の用土がブレンドされ、そのまますぐに使用できる製品のことです。

堆肥と肥料

  • 堆肥:家畜糞や落ち葉、木の皮などの有機物を微生物の力で腐熟させたもの。土壌改良のための資材です。
  • 肥料:植物に直接栄養分を与えるためのもの。

有機系肥料

有機系肥料は、堆肥(牛ふん・バーク堆肥・剪定チップ堆肥)がその代表で、土壌中の微生物に分解されてから無機化して吸収される緩効性の肥料です。

植物性堆肥

油粕

窒素成分が主体で大豆とアブラナなどの農作物から油を搾り取った残渣である。菜種の方がリン酸成分を多く含みます。日本で流通している油粕は菜種から油を採った菜種粕(なたねかす)が多い。肥料としての効果は分解されてから効果を発揮するため、効果の発現はゆっくりである。元肥や置肥などに利用。

糠(ぬか)

米ぬかはリン酸が主体でカルシウムやマグネシウムを含み、籾殻堆肥やぼかし肥を作る時の発酵促進剤として使う事が多い。そのまま土壌に撒くことはほとんどない。

刈敷(かりしき/かしき)

山野の草や柴草・雑木の若葉・若芽・稲わら・麦わらなどを田に緑肥として敷き込むこと。

腐葉土

肥料分は少ないが、土をふかふかにする。

草木灰(そうもくばい)

草や木を燃焼させた後の灰。カリウムと石灰分を含む肥料になる。水溶性のカリウムが多く即効性がある。球根や根葉類の元肥や追肥に利用。強いアルカリ性なので使い過ぎによる土壌のアルカリ化に注意を要する。

バーク堆肥

広葉樹や針葉樹の樹皮に鶏ふんや尿素などを加えて、長期間堆積発酵させたもの。肥料分は少ないが、土壌改良に効果大。通気性や保水性のよいふかふかの土にする効果があるとともに、栽培が終わったあとの土に混ぜ、再生させるときにも使われる。

動物性肥料

魚粕

魚を煮て圧縮し、水と脂分を抜いて乾燥させたもので、原料となるのは、水産食品加工製造の際の副産物・加工残滓や魚屋・料理店などからでた残渣です。窒素とリン酸を多く含み、わずかながらカリウムも含んでいる。また、微量要素を多く含むため、果菜類や葉菜類の味をよくするともいわれている。

干鰯(ほしか)

いわしを干して魚肥としたもの。

堆肥

有機物を微生物によって完全に分解した肥料のこと。最も堆肥化が行われているものが、家畜ふんの堆肥化である。使用されるふんは主に、牛糞豚糞鶏糞である。

  • 牛糞:牛舎などで集められた牛ふんに細かく切ったわら、おがくずなどを混ぜ、切り返しながら数か月かけて発酵・熟成させたもの。多少の肥料分を含み、土壌改良に効果あり。

  • 馬糞:牛ふん堆肥と同様、肥料分は少ないものの、植物性の繊維がより多く含まれていて、通気性、保水性の高いフカフカの土になる。

  • 鶏糞(けいふん):鶏ふんを発酵させたもの。チッ素、リン酸、カリウムのほか、石灰、カルシウム、マグネシウム、マンガンなどを多く含み、肥料効果が高い反面、土をやわらかくする効果はあまりなく、堆肥よりも肥料として使用されることが多い。発酵鶏ふんは、化成肥料並の高い肥料効果が期待できる。

  • 豚糞(とんぷん):牛ふん堆肥と発酵鶏糞の中間的存在。

厩肥(きゅうひ)

家畜などの糞尿や敷藁を原料とした肥料。原料を発酵させたのが堆肥で、発酵させないで生のまま使用するのが厩肥である。

下肥(しもごえ)

人尿糞。多くの地方自治体が自治体の下水処理システムから堆肥を生産しているが、それは花壇のみに用いて、食用作物には使わないよう推奨している。

骨粉(こっぷん)

一般的に「骨粉」と言われている肥料の成分は、ニワトリやブタなどの骨を高温で長時間加圧しながらの蒸気で処理し、乾燥、粉砕した「蒸製骨粉」の事を指す。その他にも「生骨粉」「肉骨粉」などがある。生骨粉は、生の乾燥させた骨を砕いたものを言い、肉骨粉は内臓やくず肉、血液なども混ぜて粉砕後、乾燥させて肥料としたものを指す。いずれもリン酸の割合が多く、効果の効き目が遅い「緩効性肥料」なのが特徴。

無機系肥料

無機質肥料は、鉱物などの原料から化学的に合成して作られた肥料で、化学肥料とも呼ばれています。一般的には、三要素である窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)の1種類を含有しているものを「単肥」と言い、2種類以上含有するものを「複合肥料」と言います。原料や製法により速効性と緩効性があります。

無機質肥料は、有機肥料に比べて即効性があり便利ですが、化成肥料だけを長期間与え続けると、用土が固くなって野菜に悪影響が出るので注意しましょう。

窒素肥料
硫安((NH4)2SO4)

硫酸アンモニアという物質のことで、窒素成分を約21%含んだ速効性の化学肥料です。主成分はアンモニア態窒素で、水に良く溶けて土壌に収集されやすい。追肥向きで、土壌の酸度調整にも使用されます。窒素分のみしか含んでいないので、他の肥料と組み合わせて使用されますが、石灰と同時にまくとアンモニアが反応してガスとなって空気中に逃げてしまうので時期をずらす必要があります。単体では窒素分が多いことから葉や茎に効く即効性の葉肥として使用されます。

1909年にドイツの科学者フリッツ・ハーバー博士が空中窒素固定法を発見し、工業的な窒素固定であるハーバー・ボッシュ法が確立されました。高温高圧下で空気中の窒素ガスと水素を反応させてアンモニアを得る方法で、このハーバー・ボッシュ法の確立により、フリッツ・ハーバー(Fritz Haber)とカール・ボッシュ(Carl Bosch)の両氏はノーベル賞を受賞しています。そして1911年、ハーバー・ボッシュ法による反応性窒素の本格的な生産を、ドイツの化学工業会社BASFが開始しました。これにより、人類は大気にある窒素を反応性窒素に大量に変換する事が可能になり、硝石やグアノのような採掘資源に頼ることなく、反応性窒素を潤沢に得られるようになりました。

合成されたアンモニアを硫酸で中和して塩の形にしたものが「硫酸アンモニウム」、塩酸で中和すれば「塩化アンモニウム」、硝酸で中和すれば「硝酸アンモニウム」となります。

硫安の登場により農産物の増産が可能になりました。

尿素((NH2)2CO)

窒素成分を約46%含んだ中速効性の化学肥料です。高度化成肥料の原料にも使用されます。なお、肥料取締法では化成肥料ですが化学的には有機物です。肥料の中でも窒素分が最も多く、硫安を上回ります。尿素は微生物に分解されてアンモニア態窒素、さらに微生物に分解されて硝酸態窒素の状態になって根から多くの窒素成分が吸収されるので、硫安よりはゆっくりとした肥料効果が期待できます。また、尿素は水に溶けやすいので200~300倍に薄めて葉面へ散布したり、100~200倍に薄めて水遣りに使用する使い方もできます。果実の甘さが落ちると嫌われる肥料の一つですが、使い方によっては非常に有効な肥料です。

塩安(NH4Cl)

塩化アンモニウム。別名「塩安(Muriate)」。肥料として単独に、また硫安、尿素と共に日本の窒素肥料の主役となる原料の一つとして広く用いられます。

硝安(NH4NO3)

硝酸アンモニウム。化成肥料の窒素源として主要な物質です。硝酸にアンモニアを加えて中和し、これを濃縮、結晶化させたものを言います。硝酸態窒素とアンモニア態窒素の両方の性質を持つため、畑作一般や寒冷地、液肥などに広く使用されています。特定条件の元で爆発性があるので、大量に取り扱うときは特に注意を要します。雨水などで流亡しやすいので、最近では硝酸態窒素の地下水汚染が問題になることがあります。追肥や実肥えとして使用します。

日本で使われている窒素肥料の多くは硫安と尿素あるいはこれらを含む化成肥料で、硝安の使用量は非常に少ない。これに対して、イギリスでは単肥の窒素肥料の8割、全窒素肥料の6割は硝安となっています。マイナスの電荷を持った硝酸は土壌に保持されず,降雨量の多い日本では硝酸は直ぐに流亡されて無駄になるので、プラスの電荷を持って土壌に保持されやすいアンモニウム系の肥料を使用されています。しかし、降雨量の少ないイギリスでは硝酸の流亡量が少ないので、主に硝安が使用されています。

燐安(NH4H2PO4)

リン酸二水素アンモニウムと塩化アンモニウムの水溶液にアンモニア水を加えて密閉し、冷却すると3水和物が得られる。リン安と呼ばれ、肥料として広く用いられる。水素塩(NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4を単にリン酸アンモニウムということもあります。リン酸成分が高いのであまり単肥として使用されることはありません。土壌酸性化の程度は少なく、随伴イオンがリン酸なので電離し難く濃度障害が起こりにくい特徴があります。リン酸は水溶性で植物に吸収されやすい形です。よい点が多いリン安ですが、リン酸含量が高すぎるので必ずその他の窒素肥料と一緒に施用しないとリン酸過剰に陥りやすくなります。

石灰窒素(CaCN2)

炭酸カルシウムと窒素を含む化学肥料。窒素を多く含みますが、石灰も多く含んでいるので窒素肥料としての効果だけでなく土壌の酸度調整にも効果があります。硫安と比較すると遅効性です。分解過程で硝酸化抑制作用のあるジシアンジアミドが生成されるのでアンモニアから硝酸に変化しにくく肥効が長く続きます。また、成分中主成分のカルシウムシアナミドが土壌中の水分と反応してシアナミドに変化し、シアナミドが農薬効果を発揮し、除草、殺菌、殺虫効果もある農薬としての効果も期待できます。一定期間後はシアナミドは分解されて無害のアンモニア性窒素に変化するので土壌汚染や障害の心配はありません。但し、シアナミドがアンモニア性窒素になるまでの一定期間は毒性があるので播種・定植はしてはいけません。また、石灰窒素は皮膚に触れたり、目に入ったりすると危険ですので取り扱いには十分注意が必要です。

硝酸カリ(KNO3)

カリウム肥料でもあります。硝酸カリウムは無色結晶の形状で、別名「硝石」とも呼ばれており、天然で存在する物質です。強い酸性を示し、少しひんやりとして塩味がする他、防腐性があるという特徴があります。また、可燃物と混合し燃焼させるとカリウムの炎色反応によりピンクから紫の炎を呈します。

硝酸カリウムは工業的には、硝酸ナトリウムと塩化カリウムを反応させて作られます。また、硝酸ナトリウムも無色結晶の形状で、南米の太平洋沿岸で産出され、別名「チリ硝石」と呼ばれています。水やアルコールに溶ける性質もあり、こちらは水に溶かすと中性を示します。

硝酸カリウムは、溶かす水の温度が下がると他の物質より溶けにくくなり、溶けるに従い溶解熱を奪ってさらに温度を下げます。よって冬季に冷たい水で溶解する場合などは、極端に溶けにくくなります。硝酸カリウムを効率よく溶かすには、湯温を使用して少しでも溶解温度を上げることで溶解性を改善することができます。

有機肥料の窒素成分は、はじめはアンモニア態窒素の状態です。そのままの状態では植物は栄養分を摂取することができないので、土壌微生物の硝化細菌によって、アンモニア態窒素は「硝酸態窒素」に変化し、植物は窒素を吸収できるようになります。このプロセスを「窒素固定」と言います。このように、植物が吸収するまでにはタイムラグがあります。そんな時に役立つのが、10日程で効果を発揮する「化学肥料」です。化学肥料(窒素)の良いところは、“アンモニア態窒素から硝酸態窒素へ”という過程を経ずに、最初から植物に吸収されやすい「硝酸態窒素」の形態をとっているところです。

リン酸肥料
過リン酸石灰(Ca(H2PO4)2)

過石(かせき)と略称される。水溶性のリン酸を約17%含んだ速効性の化学肥料です。ようりんのリン酸がク溶性で中々吸収されにくいのに対して、過リン酸石灰のリン酸は水溶性の為、すぐに土壌に溶けて吸収されるので速効性があります。但し、土壌中のアルミニウムと結合して不溶性リン酸、カルシウムと結合してく溶性リン酸に変わり水に溶けにくくなる特徴があります。

重過リン酸石灰(Ca(H2PO4)2)

重過石(じゅうかせき)とも呼ばれる。成分はリン酸二水素カルシウム。リン酸三カルシウムとリン酸を反応させることにより得られる。

リン酸加里(KH2PO4)

しばしばKDPと略される。カリウム肥料でもある。化成肥料といってもリン酸とカリウムは鉱石から作られます。

熔成リン肥

リン酸肥料の一種。熔リン(ようりん)と略称される。ようりんは、カルシウムやマグネシウムと結合した、く溶性のリン酸を約20%含んだ遅効性の化学肥料です。リン鉱石や蛇紋岩などを原料とし、炉で溶融し急冷破砕して作られる。通常は砂状であるが、造粒剤を用いて粒状に成形したものもある。水溶性ではないので植物の根は根酸を出して吸収しゆっくりとした肥料効果が期待できます。

カリウム肥料
塩化加里(KCl)

塩化カリウム。塩加と略称されることもある。単に加里と名打たれていた場合、この塩化カリウムである事が多い。カリウム鉱石から採取したカリウム塩化物でカリ成分60%の単肥の化学肥料。肥料用で流通している塩加は不純物として鉄が微量混入しているので赤色をしています。純度の高い白色の塩化と比べて赤塩加と呼ばれています。カリウムは茎、根を丈夫にし、耐病性を高め、気温に対する抵抗性を高めます。カリウムが不足すると植物の生育に悪影響が発生します。じゃがいも、トマト、玉ねぎ、にんにく、トウモロコシ、白菜、キャベツなどはカリウム不足になると生育不良が起こりますが、特にキャベツは結球時に外葉が黄色に変色してしまいます。

硫酸加里(K2SO4)

硫加と略称される。硝酸カリウムに硫酸を加えたものが硫酸カリウムです。水に溶けやすい即効性の単肥のカリウム肥料でカリウム成分50%を含みます。塩化カリウムはじゃがいもやさつまいもなど芋類に施すと筋っぽくなりますが、硫酸カリウムの場合はそうならないので芋類のカリウム肥料として最適です。また、塩化カリウムの場合は過剰施肥すると塩害が発生するのに対して、硫酸カリウムの場合は硫酸イオンが肥料として吸収される為、塩害の心配もありません。そうした利点からカリウム肥料としては硫酸カリウムが優れていますが、値段は塩化カリウムより高めです。

炭酸加里(K2CO3)

カリウムの炭酸塩です。食品工業では中華そば用の“かんすい”として使われています。

草木灰の主な成分は炭酸カリウムですが、その他の成分は何を燃やしたかによって、異なります。

アクアリウムでは、炭酸カリウムの粉末を水に溶かした「炭酸カリウム水溶液」が用いられ、水草の生育に利用されます。入れ過ぎるとカリウム過剰によってカルシウム、マグネシウムの吸収阻害が引き起こされるので注意。

ケイ酸加里(K2SiO3)

代表的な使用は水稲です。根張りが良くなり、葉の生長が促進され光合成の効果が上がります。倒伏軽減、高温や低温、日照不足等の異常気象による被害を軽減します。

ケイ酸は土壌に多量に存在していますが、作物に吸収される割合は僅かです。家庭菜園では使用する事は少ないので、普通の肥料の様に常識的に使う物ではありません。専業農家等は土壌分析後の結果次第で土壌混和します。

ケイ酸カリウムは、土壌中の有機酸や根が出す根酸などの薄い酸に溶ける肥効持続型(く溶性)肥料 です。く溶性は、作物の根から出る根酸によって溶けるので、作物はケイ酸カリウムのカリウム成分を必要とするとき、必要なだけ溶かし吸収するので、作物体中の加里濃度を必要以上に高めません。そのため石灰、苦土がバランスよく吸収されることになり、生理障害を起こしません。

塩化加里・硫酸加里と比べると、ケイ酸カリウムは、く溶性のため水に溶けず、雨水によって流亡することはありません。河川や地下水などを汚染しない肥料です。

化学肥料

化学的に合成された無機肥料を化学肥料と言います。化学肥料で肥料の3要素の1つしか含まないものを「単肥」と言います。単肥を混合して、肥料の3要素のうち2種類以上を含むようにしたものを「複合肥料」と言います。複数の単肥に化学的操作を加え、肥料の3要素のうち2種類以上を含むようにしたものを「化成肥料」と言います。化成肥料で肥料の3要素の合計が30%以上のものを高度化成と言い、それ以外を低度化成と言います。化成肥料の成分は「窒素-リン酸-カリ」という表記で表されます。例えば、「8-8-8」という表記であれば窒素、リン酸、カリが各8%で合計が24%なので低度化成とわかります。

計算式:(容量㎏)×(割合)=(含有量)になります。

例)10㎏の表記が「8・8・8」の肥料の場合は、「10㎏×0.8=800g」。つまり1袋にそれぞれの成分が800gずつ入っているということになります。

配合肥料の特徴

混合肥料、調合肥料ともいう。肥料の3要素(窒素,リン酸,カリウム)のうち2成分以上を含むように肥料原料を機械的に混合した肥料を言います。混合に際し、なんらかの化学的処理を施さない点で化成肥料と区別され、単味肥料の単なる混合なので化成肥料より含有成分量が一般に少ない。大多数は有機質肥料と無機質肥料を混合したもの。化成肥料の多くが粒状なのに対し、粉状であるなどの違いがある。配合の利点として、速効性と緩効性の組合せで肥効速度が調節できる、施肥労力が少なくてすむ、土壌や作物に合わせて配合できるなどが挙げられる。最近は配合肥料と化成肥料の区別がつけにくくなってきたことなどから、1956年以降両者を統合して複合肥料と呼んでいる。

肥料の粒の周りをコーティングして溶ける時間をコントロールする被覆肥料(ひふくひりょう)、液体タイプの液体肥料(液肥)というものもあります。

土壌改良資材

薫炭(くんたん)

「籾殻くん炭」を指すことが多い。籾殻とは、精米のときにとれる米の外側についた皮のことです。この籾殻を低温でいぶして炭化させたものが籾殻くん炭となります。他に麦殻や割り竹などを原料に用いたくん炭もあります。ケイ酸、カリウムをはじめ微量要素も多く含まれたアルカリ性の性質を持つので、痩せた酸性の土に堆肥と一緒に混ぜるとpH調整され、多くの植物が育ちやすい土壌になります。

木炭

家庭菜園の代表格とも言うべき野菜の大半が、酸性土を嫌う性質を持っています。ホウレンソウ、キャベツ、キュウリ、ピーマン、ネギ、他にサトイモ、ジャガイモ、トマトも酸性にやや弱いため、これを改善しなければなりません。日本は雨が多く、また酸性雨の影響もあり、酸性土壌と化しています。そのため、苦土石灰や消石灰で中和してから作付けする必要があります。石灰の代替品としてオススメなのが木炭です。木炭はアルカリ性のため、酸性土壌に対し中和作用をもたらします。

腐葉土
土に混ぜることで、土の再生が図れます。腐葉土には、土をふっくらと柔らかくさせ、通気性・保水性・保肥性を高める効果があります。連作障害など、いわゆる栄養分や微生物が少なくなった痩せた土を蘇らせてくれます。腐葉土が全体の30%を超えると通気性や水はけがよすぎて、植物にとって悪い環境になってしまうことがあるので注意。

赤玉土

赤玉土は弱酸性です。玉状になっているので水はけが良いことが大きな特徴です。赤玉土だけでは栄養がないので、「腐葉土」と一緒に使われることが多い。粒が大きい赤玉土の場合は、鉢底に敷いて排水性を高める役割に使うことができます。

栄養がないので無菌で衛生的という特徴を活かし、挿し木や挿し芽用の土に活用することもよく行われています。なお、普通の培養土に挿し木をすると枯れてしまいます。

室内で観葉植物などを衛生的に育てたいのであれば、赤玉土をメインに使うのがおすすめです。それに、軽くて衛生的な「バーミキューライト」や「パーライト」を加えるだけでも育てることができます。

バーク堆肥

樹木の皮などが原料になっている堆肥です。堆肥と言ってもほぼ栄養素は含まれていないので、土壌改良として使うには腐葉土と並び打って付けです。腐葉土と似ていますが、腐葉土は葉っぱが主体なので窒素分を多く含み、バーク堆肥は樹木を主体に発酵しているため炭素が多く含まれています。植物の栄養を目的として投与するならば腐葉土の方がいいとされていますが、土壌改良を目的とするならばバーク堆肥の方がバランスがとれています。

ピートモス

モス(moss)とは苔のことです。日本では水ごけが原材料として使われた物が多く、保水性や通気性、排水性が高い素材ですが、有機酸を含むために酸性を示し、土壌のpHをアルカリ性から酸性に傾ける効果があるので、単体での利用よりもそのほかの土と混ぜて使うことが多いのが特徴です。バーミキュライトなどと混ぜて土壌改良材として使われることもあります。

バーミキュライト

多孔性で、保水性、通気性と、保肥性に優れています。バーミキュライトは、容積の25%~30%の水を吸収することができるので、粘土質土壌には効果的です。また、粒子間に無数の空気隙間を作り出してくれるので、排水性も良くなり、酸素の供給も良くなるので、好気性の微生物が活発に動ける要素にも繋がります。

パーライト

ピートモスと混ぜて使われることもあり、バーミキュライトと同様に、焼成加工された多孔質で非常に軽い火山石の鉱物です。保水性や通気性・排水性が高い素材です。

牛糞

粘土質土壌や耕作放棄地の土壌改良に役立ちます。広い畑になるとバーク堆肥やバーミキュライトでは少々値が張ってしまうので、腐葉土、落ち葉、ぼかし肥料、牛糞堆肥の組み合わせがおすすめです。豚糞と鶏糞は、肥効はあっても土壌改良としては効果が薄い場合があります。馬や牛など常に草を食べている動物の発酵堆肥なら、ほぼ食物繊維なので地質の改善により効果的です。

培養土

腐葉土、砂、ピートモス、バーミキュライト、石灰などのほか、肥料を一定の割合で混ぜ合わせた土。作物を育てるために適度に成分調整され、堆肥なども既に混ぜてある状態ものなど、豊富な種類が販売されています。

苦土石灰

石灰(カルシウム)と苦土(マグネシウム)を含み、効き目が穏やかで扱いやすい。

消石灰

速効性で効果が高い。pH調整効果。

貝化石

土の団粒化を促す有機石灰、効果も長続きします。

カキ殻石灰

穏やかに長く効く有機石灰、安価で使いやすい。

EB-a

ポリエチレンイミン系資材です。土壌の団粒形成促進が主な効果として挙げられる資材です。

アクリル酸とメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合物のマグネシウム塩ポリエチレンイミンとの複合体であり、電荷の作用により土壌を瞬間的に耐水性団粒とし、土壌改良に一翼を担います。

用語集

  • 元肥(もとごえ):作物の種まき、または移植に先立って施す肥料。基肥(きひ)、原肥(げんぴ)とも呼ばれる。

  • 寒肥(かんぴ/かんごえ):冬の休眠中の樹木に施す肥料。ちょうど春から始まる木の成長を助けます。

  • 追肥(ついひ/おいごえ):育成中に与える肥料。速効性肥料が良い。

  • 置肥(おきひ/おきごえ):肥料を土の中に混ぜ込まないで、土の上に置く、肥料の施し方です。

  • お礼肥(おれいごえ):樹勢を回復するため収穫、開花したあとに与える肥料。速効性のものが最適。主に鉢植えの植物に使用。

  • 玉肥(たまひ):肥料を練って玉状に固めた緩効性有機肥料で、盆栽の培養に最も多く用いられる。原料には油粕や骨粉が主に用いられている。水やりの度に成分が少しずつ溶け出して効果を発揮する。

  • 芽だし肥(めだしごえ):芽や根が動きだす春に備えて、2月下旬~3月上旬に与える肥料のこと。発芽を促すために用いられるもので、速効性の肥料を施すのが効果的です。

  • 実肥(みごえ) :①植物の開花・結実などをよくする追肥の一種肥料。主に燐酸(りんさん)肥料をいう。②イネの結実をよくするため、出穂後に追肥する窒素肥料。

  • 穂肥(ほひ):イネやムギ類の穂の発育に必要な栄養を補給する目的で、イネでは出穂の25日前頃、ムギ類ではその40日前頃に施与される速効性の、主として窒素肥料穂肥という。

各野菜の特徴と栽培の注意点

一種類の野菜だけを育てるなら、専用の肥料もおすすめです。トマト専用、ジャガイモ専用などさまざまなものがあります。専用の肥料なら、初めての方でも安心して使えます。

果菜類

トマト・なす・きゅうりなどは、比較的収穫期間が長い野菜として分類されます。このような野菜は、肥料の効果も長続きさせることが必要です。遅効性・緩効性肥料、あるいはじっくり土壌に効いていく有機肥料がおすすめです。

  • キュウリ
    夏野菜の代表格。1株で30本〜40本の収穫が見込めます。生育スピードが早く、種まきから収穫まで約70日と、オクラやインゲンと並んで果菜類の中で最も生育が早い。また、つるが旺盛に伸びるので、適正に整枝をして風通しを良くすることが大切です。石灰不足は、葉の周縁が黄色くなり、苦土不足は葉脈間が黄色くなります。肥料が多いと苦土の吸収が悪くなり、苦土不足が起こりやすい。低温によっても発生します。

  • トマト
    ナスやキュウリと異なり、トマトは比較的乾燥気味の管理を好む野菜です。やや乾かし気味に管理を心がけると、甘み、うま味が十分に蓄えられた美味しいトマトができます。夏場でも1日1回の水やりで十分です。石灰と苦土不足が起こりやすい。石灰不足は葉縁部が黄色くなり、4段以降の果実に尻腐病が発生します。苦土不足は葉脈間が黄色くなります。

  • ナス
    乾燥に弱いので水切れには注意が必要です。開花後15~20日前後で収穫できます。苦土欠乏がよく見られ、葉脈間が黄化します。石灰欠乏は、葉縁の一部が黄色となります。

葉茎菜類

ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜には、窒素が多めの肥料がおすすめです。窒素は「葉肥」とも呼ばれ、葉を大きくするのに役立ちます。葉の育ちが悪いときに、窒素が多めの肥料を追肥することで元気を取り戻すことができます。また、光合成を促すマグネシウムが配合されているものも有効です。

  • コマツナ
    コマツナには長葉系と丸葉系がありますが、耐暑性や耐寒性が優れている丸葉系がおすすめです。コマツナは間引きした小さな株でも食べられますので、家庭菜園では大きさにあまりこだわらず収穫しましょう。モリブデン不足は、葉がカップ状に内側に巻きます。

  • ネギ
    長ネギは生長に合わせて3~4回土寄せすることで、葉鞘部を白く長く育てるのが特徴です。窒素不足は、下葉の先から枯れはじめ、葉色が薄くなります。リン酸不足は、葉は濃緑で生育しません。苦土不足は、下葉の苦土が若い葉に移行するため、外葉が黄色になります。

  • ブロッコリー
    種まきから約90~95日後には収穫ができます。アブラナ科野菜は、石灰・苦土の要求量が高くホウ素などの微量要素欠乏をおこしやすい特徴があります。葉の色を見ながら状況に応じて追肥を行います。窒素不足は下葉から黄色くなります。石灰不足は葉縁が黄変し、縁腐れになります。苦土不足は下葉の葉脈間が黄色くなります。

  • レタス
    レタスの種子は25℃以上になると休眠し、発芽しなくなる性質があります。プランターの場合、根は深く張らないため浅めのもので構いません。 窒素不足は生育が悪くなり、若い葉は立性となる。カリ不足は葉縁の切れ込みが黄色くなってくる。石灰不足は葉の周縁部が褐変し、中心部が心腐れを起こす。

根菜類・いも類

大根・にんじん・ゴボウ・じゃがいもなどの「根菜」は、根の発育を助けてくれるカリウム成分が強力な味方になってくれます。また窒素も重要で、窒素によって育った枝や葉が太陽の光を吸収して根菜の実部分に栄養を与えてくれます。

  • カブ
    カブは冷涼な気候を好むアブラナ科の根野菜です。春蒔きと秋蒔きがあり、害虫や病気の被害が比較的少ない秋蒔きが初心者には育てやすくおすすめです。カリ不足は下葉の葉縁が黄色くなります。

  • ダイコン
    やせた土地でも育つほど丈夫なアブラナ科の野菜。丈夫で土質を選ばないため栽培難易度は低めで初心者向けです。ダイコンは多肥性の野菜です。生育が急速な時期は肥料の吸収がとても盛んになります。収穫までのこの時期に肥料切れを発生させると根が大きくならず味も落ちてしまいます。 石灰不足は葉縁が黄色くなり、ホウ素不足はサメ肌ダイコンや赤しん症が起こります。また、苦土不足が起こりやすい。

  • ニンジン
    春から冬まで何回も作ることができる、定番野菜です。ニンジンの種は発芽率が低く、低温・高温、乾燥した環境では発芽しにくい特徴があります。ニンジンのオレンジ色の根の部分は、光が当たると光合成して緑化してしまいます。肩の緑化を防ぐため、根首が隠れるようにしっかり土寄せをしましょう。石灰不足は、根に丸い黒色斑点が発生します。

まとめ

  • 元肥には有機肥料、追肥には化成肥料を使うのが基本

  • 肥料の主成分は「窒素」「リン酸」「カリ」

  • 葉の部分を育てる肥料は「窒素」、実を育てる肥料は「リン酸」、根を育てる肥料は「カリ」

植物は、根を張り、土壌菌が分解してくれた無機物を吸収し生きています。堆肥を作っているのは、人間ではなく土壌中の微生物です。堆肥づくりには時間がかかりますが、人間の知恵で微生物の力を促進することができます。

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